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サイバーセキュリティ基本法案

 昨年、「サイバーセキュリティ基本法案」が10月29日に参院内閣委員会で可決され11月6日の本会議で成立となりました。 このサイバーセキュリティ基本法案は全4章35条で構成され、新たにサイバーセキュリティ戦略本部を設置してIT総合戦略本部と国家安全保障会議(NSC)と連携してサイバーセキュリティ戦略を施策の打ち出しを実施・評価をしながらセキュリティ強化実現に向けての推進を図る内容となっています。

1-1.サイバーセキュリティ基本法案構成

  • 第1章 総則 第1条~第11条  サイバーセキュリティの目的と基本理念、定義等
  • 第2章 サイバーセキュリティ戦略 第12条~第13条  サイバーセキュリティ戦略と策定と方針について
  • 第3章 基本的施策 第14条~第23条  基本的施策と国の行政機関等におけるサイバーセキュリティの確保等
  • 第4章 サイバーセキュリティ戦略本部 第24条~第35条  サイバーセキュリティ戦略の案の作成及び実施の推進と評価及び施策の実施の推進

1-2.サイバーセキュリティ基本法案成立背景

 なぜ今サイバーセキュリティに対する戦略が強く求められているのでしょうか?  その背景にはICT事業の活性化と成長、デジタル家電の普及、ITインフラ整備された現代は国内は勿論国外からの度重なるサイバー攻撃に脅かされ、その被害状況は2013年度は約508万件に上り、前年度(約108万件)の5倍近くにまで膨れこれまでのセキュリティ対策では対応が難しくなってきています。更には2020年の東京五輪・パラリンピックを控えた今、2012年のロンドンオリンピックで起こったサイバー攻撃の件数を考えても更なるサイバー攻撃防御体制の強化を海外諸国からは強く求められています。  このような時代背景の下、本法案は「サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、サイバーセキュリティに関し基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びサイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を定めるとともに、サイバーセキュリティ戦略本部を設置する等の必要がある」という目的の下成立の見通しとなり、来年度より国会ではサイバーセキュリティ予算を大幅に組み入れ防御体制の強化に取り組む予定になっています。

1-3.サイバーセキュリティ基本法案成立による市場影響

 それではなぜ今本法案の成立が注目されているのでしょうか?  度重なるサイバー攻撃の脅威もありますが、別の側面では新たな産業と市場を生む可能性を大きく秘めているからであると思われます。このサイバーセキュリティ法案が通過することで国、地方公共団体、重要インフラ事業者は再度サイバー攻撃に対する責務を見直すと共にこれまでITソリューションの性質である迅速で効率化、利潤追求を図ってきたIT産業各事業者は新たにサイバーセキュリティの施策促進に伴いセキュリティに対する認識を強化して新たな枠組み市場に参入することが求められます。その結果サイバーセキュリティに関連する施策を国、地方公共団体、重要インフラ事業、教育機関へ実施に伴いIT産業事業者はその都度(例えば私物のスマートフォン、電子機器の操作などに関する新たなマニュアル作成業務、運用実施、防御効果、評価等のソリューション等)新たなソリューションとして施策の実現に向けた提案が求められ莫大な金額が動く新たな市場として注目されることになるでしょう。更に労働市場においては新たに雇用機会と人材の育成及び確保を創出することができる成長産業となることが期待されています。

1-4.サイバーセキュリティ基本法案骨子

 さて本法案の骨子はどのようなものなのでしょうか?  このサイバーセキュリティ法案は全4章の35条で、第一章総則 第二章サイバーセキュリティ戦略、第3章基本的施策、第4章サイバーセキュリティ戦略本部から成り、内閣に新たにサイバーセキュリティ戦略本部を設置してIT総合戦略本部と国家安全保障会議(NSC)と連携しサイバーセキュリティ戦略を施策の打ち出しと実施・評価すると共にセキュリティ強化実現に向けて地方自治体などの関係機関には必要な協力体制を求め関連の取り組みを実施、そして民間事業者及び教育研究機関等には自発的な取組の促進を促す法案です。

1-5.サイバーセキュリティ戦略本部役割

 ではサイバーセキュリティ戦略本部はこの法案でどのような役割を担うのでしょうか?  サイバーセキュリティ戦略本部の役割は次の四つ、サイバー攻撃に関する重大なインシデントの原因究明調査や、行政機関の経費・施策の評価を行う機関として設置されます。 ①サイバーセキュリティ戦略の案の作成及び同戦略の実施推進 ② 国の行政機関及び独法における対策基準の作成及び同基準に基づく施策の評価(監査を含む。)その他の同基準に基づく施策の実施推進 ③ 国の行政機関で発生したサイバーセキュリティに関する重大な事象に対する施策の評価 (原因究明のための調査を含む。) ④ 上記のほか、次の事務 イ) サイバーセキュリティに関する重要施策の企画に関する調査審議 ロ) 同施策に関する府省横断的計画・関係行政機関の経費見積り方針・施策の実施に関する指針の作成、施策の評価その他の実施推進 ハ) 同施策の総合調整 インシデントの原因究明調査等では地方公共団体、独立行政法人、国立大学、特殊法人・認可法人には資料等の提出を義務付け関係強化を図り戦略を打ち出します。その直下には本部に関する事務の処理を適切に内閣官房に行わせるために必要な法制の整備等を担う内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を設け国の行政機関の情報システムに対する不正な活動の監視・分析、国内外の関係機関との連絡調整に必要な法制上・財政上の措置等の検討等を規定を行うことになります。  今、日本は2020年に東京五輪・パラリンピックを控えサイバーセキュリティに対する脅威に対するセキュリティ対策と防御強化、認識の変化を日本国内だけではなく海外諸国に見せなければならないフェーズを迎えています。そして本法案成立により新たに創出される産業によってどのような機会が生み出されていくのか、私はその二点に注目して本法案の成り行きを見つめていきたいと思っています。

サイバーセキュリティ基本法案―Rollover―

目次 第一章 総則(第1条―第11条) 第二章 サイバーセキュリティ戦略(第12条) 第三章 基本的施策(第13条ー第23条) 第四章 サイバーセキュリティ戦略本部(第24条ー第35条) 附則 第一章 総則 (目的) 第1条 この法律は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備および情報通信技術の活用の進展に伴って世界的規模で生じているサイバーセキュリティに対する脅威の深刻化その他の内外の諸情勢の変化に伴い、情報の自由な流通を確保しつつ、サイバーセキュリティの確保を図ることが喫緊の課題となっている状況に鑑み、わが国のサイバーセキュリティに関する施策に監視、基本理念を定め、国および地方公共団体の責務等を明らかにし、並びにサイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関するし施策の基本となる事項を定めるとともに、サイバーセキュリティ戦略本部を設置すること等により、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)とあいまって、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって経済社会の活力の向上および持続的発展並びに国民が安全で安心して暮らせる社会の実現を図るとともに、国際社会の平和および安全の確保並びにわが国の安全保障に寄与することを目的とする (定義) 第2条 この法律において、「サイバーセキュリティ」とは、電子的方式、時期的方式その他人の近くによって認識することができない方式(いいかこの上において「電磁的方式」という。)により記録され、又は発信され、伝送され、もしくは受信される情報の漏洩、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置並びに情報システムおよび情報通信ネットワークの安全性および信頼性の確保のために必要な措置(情報通信ネットワーク又は電磁的方式で作られた記録にかかる記録媒体(以下「電磁的記録媒体」という。)を通じた電子計算機に対する不正な活動による被害の防止のために必要な措置を含む。)が講じられ、その状態が適切に維持管理されていることをいう。 (基本理念) 第3条 サイバーセキュリティに関する施策の推進は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備および情報通信技術の活用による情報の自由な流通の確保が、これを通じた表現の自由の享有、イノベーションの創出、経済社会の活力の向上等にとって重要であることに鑑み、サイバーセキュリティに対する脅威に対して、国、地方公共団体、重要社会基盤事業者(国民生活および経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものに関する事業を行う者をいう。以下同じ。)等の多様な主体の連携により、積極的に対応することを旨として、行わなければならない。 2 サイバーセキュリティに冠する思索の推進は、国民一人ひとりのサイバーセキュリティに関する認識を深め、自発的に対応することを促すとともに、サイバーセキュリティに対する脅威による被害を防ぎ、かつ、被害から迅速に復旧できる強靭な体制を構築するための取り組みを積極的に推進することを旨として、行わなければならない。 3 サイバーセキュリティに関する施策の推進は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備および情報通信技術の活用による活力ある経済社会を構築するための取組を積極的に推進することを旨として行わなければならない。 4 サイバーセキュリティに関する施策の推進は、サイバーセキュリティに対する脅威への対応が、国際社会にとって共通の課題であり、かつ、わが国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営なまれていることに鑑み、サイバーセキュリティに関する国際的な秩序の形成および発展のために先導的な役割を担うことを旨として、国際的協調の下に行わなければならない。 5 サイバーセキュリティに関する施策の推進は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法の基本理念に配慮して行わなければならない。 6 サイバーセキュリティに関する施策の推進に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。 (国の責務) 第4条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、サイバーセキュリティに関する総合的な施策を策定し、および実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえて、サイバーセキュリティに関する自主的な施策を策定し、および実施する責務を有する。 (重要社会基盤事業者の責務) 第6条 重要社会基盤事業者は、基本理念にのっとり、そのサービスを安定的かつ適切に提供するため、サイバーセキュリティの重要性に関する関心と理解を深め、自主的かつ積極的にサイバーセキュリティの確保に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するサイバーセキュリティに関する施策に協力するよう努めるものとする。 (サイバー関連事業者その他の事業者の責務) 第7条 サイバー関連事業者(インターネットその他の個土壌法通信ネットワークの整備、情報通信技術の活用又はサイバーセキュリティに関する事業を行う者をいう。以下同じ。)その他の事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に監視、自主的かつ積極的にサイバーセキュリティの確保に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するサイバーセキュリティに関する施策に協力するよう努めるものとする。 (教育研究機関の責務) 第8条 大学その他の教育研究機関は、基本理念ののっとり、自主的かつ積極的にサイバーセキュリティの確保、サイバーセキュリティに係る人材の育成並びにサイバーセキュリティに関する研究およびその成果の普及に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するサイバーセキュリティに関する施策に協力するよう努めるものとする。 (国民の努力) 第9条 国民は、基本理念にのっとり、サイバーセキュリティの重要性に関する関心と理解を深め、サイバーセキュリティの確保に必要な注意を払うよう努めるものとする。 (法制上の措置等) 第10条 政府は、サイバーセキュリティに関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。 (行政組織の整備等) 第11条 国は、サイバーセキュリティに関する施策を講ずるにつき、行政組織の整備および行政運営の改善に努めるものとする。 第二章 サイバーセキュリティ戦略 第12条 政府は、サイバーセキュリティに関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、サイバーセキュリティに関する基本的な計画(以下「サイバーセキュリティ戦略という。」を定めなければならない。 2 サイバーセキュリティ戦略は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 サイバーセキュリティに関する施策についての基本的な方針 二 国の行政機関等におけるサイバーセキュリティの確保に関する事項 三 重要社会基盤事業者およびその組織する団体並びに地方公共団体(以下「重要社会基盤事業者等」という。)におけるサイバーセキュリティの確保に関する事項 四 前三号に掲げるもののほか、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な事項 3 内閣総理大臣は、サイバーセキュリティ戦略の案につき閣議の決定を求めなければならない。 4 政府は、サイバーセキュリティ戦略を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 5 前二号の規定は、サイバーセキュリティ戦略の変更について準用する。 6 政府は、サイバーセキュリティ戦略について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 (国の行政機関等におけるサイバーセキュリティの確保) 第13条 国は、国の行政機関、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)および特殊法人(法律により直接に設立された法人であって、総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第15号の規定の適用を受けるものをいう。以下同じ。)等におけるサイバーセキュリティに関し、国の行政機関および独立行政法人におけるサイバーセキュリティに関する統一的な規準の策定、国の行政機関における情報システムの共同化、情報通信ネットワーク又は電磁的記録媒体を通じた国の行政機関の情報システムに対する不正な活動の監視及び分析、国の行政機関におけるサイバーセキュリティに関する演習及び訓練並びに国内外の関係機関との連携及び連絡調整によるサイバーセキュリティに関する情報の共有その他の必要な施策を講ずるものとする。 (重要社会基盤事業者等におけるサイバーセキュリティの確保の促進) 第14条 国は、重要社会基盤事業者等におけるサイバーセキュリティに関し、基準の策定、演習及び訓練、情報の共有その他の自主的な取り組みの促進その他の必要な施策を講ずるものとする。 (民間事業者及び教育研究機関等の自発的な取組の促進) 第15条 国は、中小企業者その他の民間事業者及び大学その他の教育研究機関が有する知的財産に関する情報がわが国の国際競争力の強化にとって重要であることに鑑み、これらの者が自発的に行うサイバーセキュリティに対する取組が促進されるよう、サイバーセキュリティの重要性に関する関心と理解の増進、サイバーセキュリティに関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うことその他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、国民一人ひとりが自発的にサイバーセキュリティの確保に努めることが重要であることに鑑み、日常生活における電子計算機又はインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用に際して適切な製品又はサービスを選択することその他の取組について、サイバーセキュリティに関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うことその他の必要な施策を講ずるものとする。 (多様な主体の連携等) 第16条 国は、関係府省相互間の連携の強化を図るとともに、国、地方公共団体、重要社会基盤事業者、サイバー関連事業者等の多様な主体が相互に連携してサイバーセキュリティに関する施策に取り組むことができるよう必要な施策を講ずるものとする。 (犯罪の取締り及び被害の拡大の防止) 第17条 国は、サイバーセキュリティに関する犯罪の取締り及びその被害の拡大の防止のために必要な施策を講ずるものとする。 (わが国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事象への対応) 第18条 国は、サイバーセキュリティに関する事象のうちわが国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるものへの対応について、関係機関における体制の充実強化並びに関係機関相互の連携強化及び役割分担の明確化を図るために必要な施策を講ずるものとする。 (産業の振興及び国際競争力の強化) 第19条 国は、サイバーセキュリティの確保を自立的に行う能力をわが国が有することの重要性に鑑み、サイバーセキュリティに関連する産業が雇用機会を創出することができる成長産業となるよう、新たな事業の創出並びに産業の健全な発展及び国際競争力の効果を測るため、サイバーセキュリティに関し、先進的な研究開発の推進、技術の高度化、人材の育成及び確保、競争条件の整備等による経営基盤の効果及び事業の開拓、技術の安全性及び信頼性に係る規格等の国際標準化及びその相互承認の枠組みへの参画その他の必要な施策を講ずるものとする。 (研究開発の推進等) 第20条 国は、我が国においてサイバーセキュリティに関する技術力を自立的に保持することの重要性に鑑み、サイバーセキュリティに関する研究開発及び技術等の実証の推進並びにその効果の普及を図るため、サイバーセキュリティに関し、研究体制の整備、技術の安全性及び信頼性に関する基礎研究及び基盤的技術の研究開発の推進、研究者及び技術者の育成、国の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、研究開発のための国際的な連携その他の必要な施策を講ずるものとする。 (人材の確保等) 第21条 国は、大学、高等専門学校、専修学校、民間事業者等と緊密な連携協力を図りながら、サイバーセキュリティに係る事務に従事する者の職務及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、当該者の適切な処遇の確保に必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、大学、高等専門学校、専修学校、民間事業者等と緊密な連携協力を図りながら、サイバーセキュリティに係る人材の確保、養成及び資質の向上のため、資格制度の活用、若年技術者の養成その他の必要な施策を講ずるものとする。 (教育及び学習の振興、普及啓発等) 第22条 国は、国民が広くサイバーセキュリティに関する関心と理解を深めるよう、サイバーセキュリティに関する教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。 (国際協力の推進等) 第23条 国は、サイバーセキュリティに関する分野において、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすとともに、国際社会における我が国の利益を増進するため、サイバーセキュリティに関し、国際的な規範の策定への主体的な参画、国際間における信頼関係の構築及び情報の共有の推進、開発途上地域のサイバーセキュリティに関する対応能力の構築の積極的な支援その他の国際的な技術協力、犯罪の取締りその他の国際協力を推進するとともに、我が国のサイバーセキュリティに対する諸外国の理解を深めるために必要な施策を講ずるものとする。 第4章 サイバーセキュリティ戦略本部 (設置) 第24条 サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、サイバーセキュリティ戦略本部(以下「本部」という。)を置く。 (所掌事務等) 第25条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。 一 サイバーセキュリティ戦略の案の作成及び実施の推進に関すること。 二 国の行政機関及び独立行政法人におけるサイバーセキュリティに関する対策の基準の作成及び当該基準に基づく施策の評価(監査を含む。)その他の当該基準に基づく施策の実施の推進に関すること。 三 国の行政機関で発生したサイバーセキュリティに関する重大な事象に対する施策の評価(原因究明のための調査を含む。)に関すること。 四 前三号に掲げるもののほか、サイバーセキュリティに関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、府省横断的な計画、関係行政機関の経費の見積もりの方針及び施策の実施に関する指針の作成並びに施策の評価その他の当該施策の実施の推進並びに総合調整に関すること。 2 本部は、サイバーセキュリティ戦略の案を作成しようとするときは、あらかじめ、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部及び国家安全保障会議の意見を聴かなければならない。 3 本部は、サイバーセキュリティに関する重要事項について、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部との緊密な連携を図るものとする。 4 本部は、我が国の安全保障に係るサイバーセキュリティに関する重要事項について、国家安全保障会議との緊密な連携を図るものとする。 (組織) 第26条 本部は、サイバーセキュリティ戦略本部長、サイバーセキュリティ戦略副本部長及びサイバーセキュリティ戦略本部員をもって組織する。 (サイバーセキュリティ戦略本部長) 第27条 本部の長は、サイバーセキュリティ戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。 2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を式監督する。 3 本部長は、第25条第1項第2号から第4号までに規定する評価又は第30条若しくは第31条の規定により提供された資料、情報等に基づき、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告するときができる。 4 本部長は、前項の規定により関係行政機関の長に対し韓国したときは、当該関係行政機関の長に対し、その勧告に基づいてとった措置について勧告を求めることができる。 5 本部長は、第3項の規定により韓国した事項に関しとくに必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、当該事項について内閣法(昭和22年法律第5号)第6条の規定による措置が取られるよう意見を具申することができる。 (サイバーセキュリティ戦略副本部長) 第28条 本部に、サイバーセキュリティ戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。 2 副本部長は、本部長の職務を助ける。 (サイバーセキュリティ戦略本部員) 第29条 本部に、サイバーセキュリティ戦略本部員(次項においては「本部員」という。)を置く。 2 本部員は、次に掲げる者(第1号から第5号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。 一 国家公安委員会委員長 二 総務大臣 三 外務大臣 四 経済産業大臣 五 防衛大臣 六 全角号に掲げる者のほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣が指定する者 七 サイバーセキュリティに関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者 (資料提供等) 第30条 関係行政機関の長は、本部の定めるところにより、本部に対し、サイバーセキュリティに関する資料又は情報であって、本部の所掌事務の遂行に資するものを、適時に提供しなければならない。 2 前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、本部長の求めに応じて、本部に対し、本部の所掌事務のすこうに必要なサイバーセキュリティに関する資料又は情報の提供及び説明その他必要な協力を行わなければならない。 (資料の提出その他の協力) 第31条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、地方公共団体及び独立行政法人の長、国立大学法人(国立大学法人法(平成15年法律第112号)第二条第1項に規定する国立大学法人をいう。)の学長、大学共同利用機関法人(同情第3項に規定する大学共同利用機関法人をいう。)の機構長、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成16年法律第74号)第13条に規定する日本司法支援センターをいう。)の理事長、特殊法人及び認可法人(特別の法律により設立され、かつ、その設立等に関し行政官庁の認可を要する法人をいう。)であって本部が指定するものの代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。 2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。 (地方公共団体への協力) 第32条 地方公共団体は、第5条に規定する施策の策定又は実施のために必要があると認めるときは、本部に対し、情報の提供その他の協力を求めることができる。 二 本部は、前項の規定による協力を求められたときは、その求めに応じるよう勤めるものとする。 (事務) 第33条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。 (主任の大臣) 第34条 本部に係る次項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。 (政令への委任) 第35条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な次項は、政令で定める。 附則 (施行期日) 第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二章及び第4章の規定並びに附則第4条の規定は、交付の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (本部に関する事務の処理を適切に内閣官房に行わせるために必要な法制の整備等) 第2条 政府は、本部に関する事務の処理を適切に内閣官房に行わせるために必要な法制の整備(内閣総理大臣の決定により内閣官房に置かれる情報セキュリティセンターの法制化を含む。)その他の措置を講ずるものとする。 2 政府は、前項の措置を講ずるに当たっては、専門的知識を有する者を内閣官房において人気を定めて職員又は研究員として任用すること、情報通信ネットワーク又は電磁的記録媒体を通じた国の行政機関の情報システムに対する不正な活動の関し及び分析並びにサイバーセキュリティに関する事象に関する国内外の関係機関との連絡調整に必要な機材及び人的体制の整備等のために必要な法制上及び財政上の措置等について見当を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 (検討) 第3条 政府は、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)第24条第1項に規定する緊急事態に相当するサイバーセキュリティに関する事象その他の情報通信ネットワーク又は電磁的記録媒体を通じた電子計算機に対する不正な活動から、国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるもの等を防御する能力の一層の強化を図るための施策について、幅広い観点から検討するものとする。 (高度情報通信ネットワーク社会形成基本法の一部改正) 第4条 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法の一部を次のように改正する。 第26条第1項中「事務」の下に「(サイバーセキュリティ基本法(平成26法律第○○○号)第25条第1項に掲げる事務のうちサイバーセキュリティに関する施策で重要なものの実施の推進に関するものを除く。)」を加える。 理由 サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、サイバーセキュリティに関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びサイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を定めるとともに、サイバーセキュリティ戦略本部を設置する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。